コロラド・キッド

作家デビュー50周年を記念して、次々と邦訳作品が刊行されるから、うっかり読み逃してしまわないか心配になる。
本書は『死者は嘘をつかない』に続く、最新の邦訳作品だ(だよな?)。
表題作『コロラド・キッド』に、『浮かびゆく男』と『ライディング・ザ・ブレッド』の2作を加えた、スティーブン・キングの中篇集。
どの作品も、キングの得意とする読み応えのあるホラーだが、個人的には、作者の幼少期を反映した親子の描写や、離婚した独り身の男の心情描写に強く心打たれた(そりゃそうだよな)。
特に『コロラド・キッド』は、主要登場人物がたった3人の新聞記者という異色の構成で、未解決事件の真相を語り合うという内容だ。
キング自身もこの作品に対して読者の賛否が分かれるだろうと予想していて、巻末のあとがきで自身の解釈を補足している。
その言葉とともに、深い感動が得られる一作だ。
過去は歴史(ヒストリー)で、未来は謎(ミステリー)だ。
だから世界は『コロラド・キッド』で満ちている。
意味が分からない?
大丈夫。
いまこのブログを書いている自分だって、感動の余韻に浸りながらも、いずれその言葉を忘れてしまうのだから(老いは嫌だね)。
ただ、恐怖と幻想に満ちた物語の中で、思わず涙がこぼれそうになる体験をしたいなら、キング作品は外せない。
特に本書は、読みやすい中篇3作が揃っている。
私は、スコットの最期、ヴィンスの渋い老い、そしてジーンのリアルな母性にすっかり魅了された。
それらの感動は、文脈の中では忘れてしまうかもしれないが、実は心の中にしっかりと残り、現実世界の人間関係に、いい意味で作用すると思っている。
そして、その心情の機微を受け取ってくれる人間と関わりたいと思っている。
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