飼主の見ているところで
ウサギは被食動物としての本能から、非常に警戒心が強く、院内ではちょっとした刺激でパニックに陥りやすい生き物です。
さらに、骨密度は犬や猫の約1/3ともいわれ、ジャンプの着地失敗や抱っこからの落下といった、些細な事故でも簡単に骨折してしまいます。
骨が軽いのは、筋肉や腱の反発力で瞬時に逃げ出せるよう進化してきた証でもありますが、その“警戒心の強さと骨のもろさ”が、時に大きなリスクとなります。
動物病院という空間は、検査・処置・治療など、ウサギにとっては不安とストレスの連続です。
ウサギの年齢、体格、病状を正確に読み取って対応しない限り、思わぬアクシデントが起きる可能性は常にあります。
もし、そうしたトラブルが飼主さんの見ていないところで起きてしまったら——
多くの飼主さんは、獣医師に油断や過失があったのではないかと疑うはずです。
それは、ごく自然な感情だと思います。
他院を揶揄するつもりはまったくありません。
たとえば当院では、臼歯の不正咬合の処置を無麻酔で行っていますが、そのたびにウサギが暴れるリスクを伴います。
実際、保定中に強く蹴った衝撃で脊椎を骨折した例もありました。
そうした経験をふまえ、処置方法を幾度も見直し、現在の形に至っています。
このような処置に限らず、爪切りや採血といった日常的なケアでさえ、「ウサギの骨は脆い」という前提を忘れてはいけません。
病院内で行われるすべてのことが、ウサギにとっては潜在的なリスクなのです。
だからこそ私は、飼主さんの視線を感じながら処置を行うことを大切にしています。
何かあったときに、すぐに共有できるように。
そしてなにより、ウサギの安全を守るために——
透明な空間での診療が、何よりも必要だと考えています。
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