信頼関係
飼主さんには興味深い話だと思うので紹介します。
今日、難易度の高い手術を行いました。
手術前に飼主さんへ、できるだけ詳しく手術の手順を説明し、個人的に難しいと感じている部分も正直に伝えました。
「決して危ない橋は渡りません。しかし、できるだけ根治に近づけるように手術を行います」
そんな説明を一通り真剣に終えたあと、少しだけ赤裸々で正直な心境も話しました。
「昨夜は深夜までいろいろシミュレーションしていて、あまり眠れなかったんです」
「いっそ術前検査で何か見つかって手術不可になれば、逃げられるな……なんて思ったりもしました」
「でも、手術をしなければ何も解決しませんからね」
もちろん、こういう話をするかどうかは相手によります。
聞き手によっては「なんて自信のない発言なんだろう。本当に大丈夫?」と不安に感じるかもしれません。
ただ、予想通りその飼主さんは「せんせいなら、この期に及んでそんなことも言うだろうな」と共感してくれました。
そもそも、難易度が高いとはいえ、やれる自信がなければこんな心情は話しません。
飼主さんが心配しているのと同じように、こちらも苦慮していたことを共有したかったのです。
獣医師といっても完璧ではありません。
人間なのですから完璧な存在などなく、自らを完璧だと言えるのは無知ゆえだと思うのです。
飼主と獣医師。
人間同士が共に苦悩しながら最善の方法を導いた——その実感を共有したかったのです。
相手は選ばざるを得ませんが、こうした飼主さんとの信頼関係を築くことは、この仕事をするうえでとても大切なことだと思います。
手術ですか?
もちろん、うまくいきました。
待合室で祈りながら待っていてくれた飼主さんの念も、きっと手助けしてくれたのだと思います。
大変でしたけどね。
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