ストレスは必要です
前回の 5年前に手術したのに、巣作り行動【3】から派生して。
適度なストレスは、生き物にとって必要なのです。
これは「ストレス=悪」とは限らないという、生理学・行動学の根幹に関わるテーマです。
- 「ストレス」は生命維持のスイッチ
生き物にとってストレスとは、単なる“嫌なこと”ではなく、”体と脳を動かすためのスイッチ(刺激)” です。
軽度のストレス刺激(音・匂い・環境変化など)は、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)、アドレナリン、ドーパミンといったホルモン分泌を促し、免疫・代謝・覚醒レベルを一定に保つ役割を果たします。
これらがゼロになると、逆に生命活動が「低速化」します。
いわば、「エンジンがかからない状態」 - 適度なストレスは「適応力」を鍛える
行動生理学では、「ストレスは生体の恒常性維持(ホメオスタシス)を保つための訓練」とも言われます。
軽いストレス → 体が“修復”を覚える→ 免疫・神経系が強化される。
つまり、”生きるための“筋トレ” です。
まったくストレスがない環境(=完全な安楽状態)に置かれると、刺激応答系が鈍り、免疫系が低下し、精神面では意欲・探索欲が減退します。
ウサギで言えば、“掘る” “警戒する” “走る” などの行動目標がなくなり、結果的に代謝や消化機能も落ちてしまうんです。 - 適度なストレスが「遺伝子修復」を促す
生物学的には、ストレスがDNA修復酵素を活性化することもわかっています。
たとえば、軽い寒暖差・短時間の空腹・運動刺激などは、細胞の防御機構(SIRT遺伝子やヒートショックタンパク質)をオンにします。
つまり、「ちょっとしんどい」が “長生きの鍵” というパラドックス。 - ウサギの場合で言えば
完全に静かで変化のない環境に置くと、警戒心が鈍る、食欲・排便リズムが乱れる、“退屈ストレス”がかえって増える。
結果、自律神経のバランスが崩れ、寿命が縮むことがあります。
一方、“少しの変化”や“刺激(散歩・声かけ・新しい牧草)”があると、脳が活性化し、ホルモン・代謝のバランスが保たれる。
結論
「ストレスはゼロより、少しある方がいい」
それが、生命の自然な在り方です。
生き物にとって理想なのは——
「危険はないけど、ちょっとだけ挑戦がある環境」
完全な安寧は、退屈と停滞を生みます。
“心地よい緊張感”こそが、生を長らえるスパイスです。
昔、私の愛兎・イナバが、診療前に腹を出してだらしなく寝ている姿を見つけると、わざと近くで「ドンッ」と足ダンして驚かせて起こしてました。
これはもちろん——
私の彼に対する、深い愛情の表れです。
……いや、ただ、
これから働くのに、気持ちよく寝てる奴が憎らしかっただけかもしれません。
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