無症状のウサギに対する臼歯処置は?

ウサギの臼歯不正咬合に対する対応は、「慎重派(無処置)」と「積極派(予防処置)」に分かれます。

慎重派の立場としては、
「咬合に多少の異常があっても、無症状であれば生活に支障はない」
「むやみに手を加えることで、かえって咬合バランスを崩すリスクがある」
といった考えが根拠となります。
ただしこの立場には、経過観察に熟練を要することや、異常の見逃しを指摘されるリスクといった課題も伴います。

一方の積極派は、
「いずれ症状が出る前に、予防的に削るべき」
「早期に処置を行うことで、将来的な苦痛やトラブルを防げる」
と考えます。
しかし、不要な処置によるバランスの崩壊や、動物・飼主へのストレス、費用負担の増加などが問題となることもあります。

私自身は、「無症状であれば処置は慎重に判断すべき」という立場です。

特に、臼歯に限定した“予防的な削合”は、リスクと利益のバランスが崩れやすいと感じています。
処置を行うことが常に「正しい」とは限らず、むしろそのまま生涯を通して症状が出ないウサギも多く存在することを考えれば、「削らない」という判断が、獣医師として妥当な選択となる場面も少なくないはずです。

さらに当院では、慎重派(無処置)の弱点を補う手段として、
飼主さんに「臼歯不正で異常な咀嚼をしているウサギ」の動画を見ていただく取り組みを行っています。
これにより、ご家庭での早期発見につながりやすくなり、症状の見逃しを防ぐことにもつながります。

なお、臼歯処置を希望される飼主さんで、積極派(予防処置)の病院に受診経験があり、慎重派(無処置)の当院へ訪れる方は、ぜひ本稿をお読みいただいたうえでご検討ください。

方針の違いをご理解いただいたうえでの診療が、お互いにとって安心な形につながると考えています。

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