恐怖を失った男

お気に入りのアクション小説作家が、また一人増えそうな予感。
その名は M・W・クレイヴン。
私と同じ1968年生まれで、作家になるまでの経歴がとてもユニーク。
イギリス出身の彼は16歳で英国陸軍に入隊し、12年間勤務。
その後、ボディガードやカワウソの世話など、多岐にわたる仕事を経験しつつ、大学で社会福祉の学位を取得。
保護観察官として16年間働いたのち、癌を患ったことをきっかけに執筆への情熱が再燃し、専業作家としての道を歩み始めた。
今回読んだ本は、特殊な脳の疾患により恐怖を感じなくなった主人公が、誘拐されたかつての上司の娘を救出する物語。
全700ページ弱の分厚い文庫を手にして、最初は「これは手ごわそうだ」と少し身構えたものの、読み始めてすぐにその不安は消え去った。
一つひとつの章が短く、抑制の効いた文体で進むため、とても読みやすい。
そして、どの章も必ず次が気になる展開で終わる巧妙な構成。
要するに、文章力に優れた作家の中でもひときわ光る実力を持った書き手の作品。
おかげで、3日間も無意識に夜更かしをしてしまい、気づけば一気に読了していた。
面白いだけでなく、著者が読書家であることが伝わる膨大な知識に裏打ちされた小ネタも満載で、思わず下線を引いて記憶に留めたくなる箇所も多数。
本国イギリスではこの作品の続編が刊行予定とのこと。
さらに、既に発表されている「ワシントン・ポー」シリーズにも手を伸ばしたくなる。
久しぶりに「次はどの作品を読もう」とワクワクさせてくれる作家に出会えました。
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