鰥夫
そもそも野生の動物ならば、過酷であろうが何だろうが “自然” のなかで、短命であろうが長寿(ほぼ無いだろうが)であろうが “自然” の天命を全うするものだ。
人間が、異種動物を家族に迎え入れたいという我儘な欲求を満たすために、ペットは存在する。
罪悪感薄める目的で伴侶動物なんて呼び方を変えているが、ペットとはそういう生きものだ。
彼らが、人間の “不自然” な生活に適応する手助けをし、”不自然” に寿命を伸ばす治療を施すのが獣医師の仕事で、自分はその仕事で20年以上日銭を稼いで生きている。
飼主さんや自分を否定しているわけではない。
それはこの職業営んだ時点で納得済み。
なんでこんな嫌みな話をするかというと。
近々来る自分の生まれた日(五十を過ぎると誕生日なんてこっ恥ずかしくて書けん)に、がっつり去勢手術の予約が入ったから。
彼らが “不自然” な人間の生活にストレスなく適応し、少しでも快適な暮らしが可能になるように、彼らの睾丸を切除する術。
それを私がするわけだ、がっつり。
だったら当たり前のように因果として受け入れるべき鰥夫生活。
自分の場合は、3人も子供を授かる天の目溢しがあっただけ幸せ。
なんていう思いを、割と真面目に持っている。
結構獣医師あるあるだったりするかも。
だって身近な同業にも訳あり、いや私も含めて難あり多いもの。
あっ、ここまで言う必要ないか。