任侠映画だった

稀代の邦画大ヒット作に対して、僻みっぽい批評も散見されるようになってきた。
そこで、4ヶ月前に鑑賞した私感を記しておきたい。

観客の大半を占めていた女性たちの感動をさらった映画『国宝』。

しかしその実態は――イケメン俳優のダブル主演と、花姿風靡な女形の美しさに巧みに包まれた、“骨の髄まで任侠映画”だったと、私は思っています。

登場する男たちは皆、心を向ける相手が男。
女性には、そもそも関心すら示さない。
描かれていたのは、まさに「男同士の情念の物語」でした。

そんな世界観を、美のヴェールに惑わされることなく読み取り、なおかつ涙を禁じ得なかった女性観客が、果たしてどれほどいたでしょうか。

昭和の任侠映画では、上映後、男たちは肩で風を切って劇場を後にしたものです。
その精神構造を、今作は――まさかの形で――女性観客の胸に染み込ませ、しかも涙まで誘った。
その手腕たるや、監督に脱帽するほかありません。

本作は、おそらく初めて“言語でなく感情で”、女性に任侠を理解させた映画だったのではないでしょうか。

劇場で、私の両隣にいた女性たちが、感動で静かに涙を拭っている姿を見ながら、正直、私はちょっと愉快で、ちょっと爽快でした。

たとえば私が、「ハードボイルドのヴェールに包まれた魂の女絵巻」などを観せられても、果たしてあそこまで無邪気に涙する自信があるかどうか……。

それほどまでに本作は、観る者の“感受性の境界”を越えて心に届いた――

まさに、歴史に残る任侠作品だと、私は思っています

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