あったまわるい、けどサイコー
「お前ら、あったまわりーなっ!」
かつて、私が兄貴と慕い、尊敬してやまなかった先輩が、現役バリバリのころにいつも放っていた言葉だ。
彼は、本心からそう吐き捨てるだけのことはある人物で、私の人生で出会った中で最も頭のキレる男だった。
有言実行、そしてそれを確実に行動に移す、まさに策士。
今でこそまとも(?)になったが、平成初期の獣医師会は、社会のはみ出し者たちのたまり場の様相だった。
いつ内部分裂が起きてもおかしくない、プロレス団体の内ゲバみたいな世界。
彼はその群れを陰でまとめるフィクサー的な存在。
そんな人間の足元にも及ばないが、私は近くでその処世術を見て学んだ……はずだった。
だが、結果的に継承したのは「あったまわりーな!」の口癖だけ。
酔うとついマネして口走ってしまう、ただのダメオヤジになってしまった。
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そして昨夜、久々に10年来の飲み仲間が集まった。
仲間の計らいで、中村区の小さな店を貸し切り、我々だけの空間に。
酒が進むと、自然と昔話や近況、これからの人生を語り合う、熱くてバカバカしくて楽しい時間が流れる。
最年長の私は、最初こそ「下々(わざとこう言います、シャレですよ)」の話を「あったまわりーよ」と余裕たっぷりに聞いていた。
……はずなのに。
気づけば、自分が中心になり、みんなの笑い者になっていた。

なんとも、みっともない。
あとからシラフで思い出せば、顔を覆いたくなるような醜態。
まさに「あったまわるい」やつそのものじゃないか。
でもなぁ、笑った。
皆して、1年分笑った。
10年前から1ミリも進歩していない、「部外者には絶対見せられない」バカの集まりだったけど、サイコーに楽しい夜だった。
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