足ダンは、やり返せ
溺愛するウサギの仕草は、何を見ても飼主にとっては可愛く映るものです。
しかし、ウサギの仕草は、愛嬌を振りまいたり、ゴマをすったり、相手を意識した行動というよりも、ほとんどが己の感情の発露だと思います。
例えば、後肢で地面を叩いて大きな音を出す行為は「スタンピング」や「足ダン」と呼ばれ、声帯を持たないウサギにとって重要なコミュニケーション手段です。
足ダンの理由としては、危険や変化を察知したとき、不快感を示すとき、空腹のとき、飼主に何かを要求するときなどが挙げられます。
そのため、飼主は愛兎の心情を慮る必要があります。
とはいえ、私は50代にして相手を慮る性質に欠け、ウサギ以上に感情の発露が激しい人間です。
彼らの足ダンを聞くと、その理由を考える前に「挑発された!」「喧嘩を売られた!」と反射的に興奮してしまいます。
思わず手近な机を叩いて、足ダンの数倍も大きな破裂音を相手に届け、「なめたらいかんぜよっ」と鬼龍院花子ばりに睨みを効かせるのです。
「獣医師なんだから、もう少しきめ細かにウサギを見ろよ」という批判は甘んじて受けます。
しかし、実際に足ダンを仕返したウサギたちが、その後の来院で大人しくなることを踏まえれば、間違った対処法とも思えません。
だから飼主さんにも「なめられないように足ダン仕返し」を奨励しているのですが、なめられることすら喜ぶ飼主さんが多く、なかなか伝わりません。
なんなんでしょうね?
人間相手なら烈火のごとく怒るはずなのに、ウサギなら許せるどころか、むしろ愛おしく感じてしまうのですから。
ちなみに、イヌの世界ではこのような行動は「権勢症候群」として行動学で認識されています。
飼主は「何とかしなくては」と深刻に考えます。
獣医師は、その問題を共有したうえで「行動療法」を勧めます。
そこには「可愛い」「愛おしい」と捉える飼主も獣医師もいません。
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