複数飼育
「野生のアナウサギは集団で生活しているのだから、その血を引くペットウサギも、複数で飼育したほうがよいのでは?
ウサギは孤独に弱い生きものだから、仲間がいた方が幸せなのでは?」
――こうした考え方は、ウサギを販売する業者や、診療する獣医師の立場からすると、都合の良いものかもしれません。
ウサギがたくさん売れれば、それだけ病気の機会=診療のチャンスも増えるのですから。
でも私は、多くの人が「ウサギは仲間がいた方が幸せ」と考える中で、むしろそうは思っていません。
これまで、ウサギ同士がイヌ・ネコのようにじゃれ合ったり、本当の意味で“仲良くしている”ような場面を見たことがありません。
たしかに毛づくろいをし合うことはありますが、そこには愛情よりも、順位の確認や主導権争いのような空気を感じることが多いのです。
結局、自然界で群れを作って暮らすのは、それが生き延びるための手段であり、元々が社交的な性格だからではないのでは?
私は、ウサギという生き物は、本質的には個人主義的で利己的な生き方をしているのではないかと考えています。
今日、子宮癌の手術を無事に乗り越え、半年経過した老齢のウサギの診察を終えたあと、飼主の奥様からこんな相談を受けました。
「もう一匹、家族でフレミッシュジャイアントを飼いたいねって話してるんです。先生はどう思いますか?」
祝福ムードの場で水を差すようで申し訳なかったのですが、私はいつものように思ったことをそのまま口にしてしまいました。
「やめなさいって」
「自分が70歳で、お腹を開ける大手術を乗り越えて、ようやく余生をのんびり過ごそうとしているところに、突然“ジャイアント馬場”と共同生活させられたら、どう思う?」
――言ってから、馬場さんに失礼だったな…と反省しました。
でも実際、自分より若くて、活発で、何倍も大きな同種の動物。
そりゃあ、やっかいこの上ないでしょう。
本来は自分の仕事にとってマイナスかもしれませんが、正直な気持ちなので、あえてお伝えしました。
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