性分化疾患

先日、知り合いの獣医師から非常に興味深い報告を聞きました。

雄ネコの去勢手術を行う際、外性器は明らかに雄型(陰茎様構造)であったため、通常どおり手術を進めようとしたところ、睾丸が存在せず、代わりに体腔内に子宮と卵巣が確認されたそうです。
つまり、外見上はオスでありながら、内部生殖器はメスという個体でした。

このような症例は、従来の医学用語では「雌性仮性半陰陽(female pseudohermaphrodite)」と呼ばれていましたが、近年の獣医学・医学の分野では「半陰陽」「ヘルマフロダイト」といった用語は避けられ、性分化疾患(DSD:Disorders of Sex Development)という分類が用いられています。
今回の「外観はオス・内部はメス」という症例は XX DSD に該当し、その発生頻度は数千~数万頭に1例程度で、一般の開業獣医師が「一生に1例遭遇するかどうか」という極めて稀なものだそうです。

ちなみにイヌではどうか調べてみると、ネコよりも一桁ほど発生率が高く、一般臨床医が数例経験しても不思議ではないレベルとされています。
さらにヒトの場合では、先天性副腎過形成による XX DSD が大多数を占め、発生頻度はおよそ 1万~2万人に1人といわれています。

一方、ウサギに関しては――
発生率そのものが極めて低い可能性があることに加え、イヌやネコほど去勢・避妊手術が一般的ではないため、発見されないまま生涯を終える個体が多いと考えられています。
その結果、発生率を推定できる疫学的データすら存在していません。

私自身もキャリアの終盤に差しかかっており、おそらく今後このような症例を診ることはないだろうと思います。
それほどまでに稀少な症例です。

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