去る者は追わず
前回「地元に信頼できる先生がいることが、一番大切なことだ」と、当院に無理して来る必要はないようなこと書きました。
有り体に言えば、ギラギラと野心に燃えたり借金に追われることもなく、日々スタッフと気持ち良く仕事がしたいだけ。
過度に飼主を崇める必要がないから、無欲な物言いができたのだと思います。
何事も本音で飼主さんと向き合えるので、私も現況には満足しています。
しかしこんな私も、己の職に対する矜持を僅かながらに持っています。
口では私如きと言いながら、己だけでこれからも診続けたいと思う、拘りの患者さんも実は存在します。
相当苦慮、試行錯誤した治療を経て、小康状態が得られた患者さんなら、純粋に以後も診続けたいという欲求は芽生えるものです。
ただ飼主さんにも様々な都合が生じます。
心変わりや私への信頼消失もあるでしょう。
「あれ? あの患者さん最近診なくなったな。今後の治療計画も立ててたんだけど、今も元気にしてるのかな?」と思いを馳せることになってしまうことも、そう多くないですがあるにはあります。
昔私が勤務医をしていた病院では、来院が途絶えた患者に対して電話で容態確認を取っていました。
あれから時代も大きく変わり、お節介や思いやりは、ときに迷惑と取られる世の中になったと私は認識していますから、今はそういう方法は取らないことにしています。
去る者は追わずの精神でいくしかないのですが、やはり喪失感には見舞われます。
そういうとき、飼主さんの顔は全く思い出せないのですが、患者さんの姿はずっと記憶に残っています。
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