ごめんな

例えば──
「せんせい、うちの子、この前呼吸が荒かったんだけど…」と飼主さんから稟告がある。

でも、いざ診察すると呼吸は落ち着いている。
診察台の上なんて、緊張と興奮のピーク。
もし心臓や呼吸器に本当の異常があるなら、“今でしょ!” くらいの勢いで症状が出るはずだ。
その瞬間に何もないなら、「継続的な異常はない」と私は判断する。

もちろん触診も聴診もする。
余計な費用がかからない範囲で、必要な確認は全部したうえで。
その様子を飼主さんにも見てもらい、説明して、「大丈夫だと思うよ」と伝える。

…でも、飼主さんの目には、どうもそう映らないらしい。

「レントゲンは撮ってくれないんですか?」

昔の私なら、さらに丁寧に説明を重ねていただろう。
私感にすぎないけれど、「異常なし」と判断した子に余計なストレスはかけたくないし、飼主さんに不必要な出費もさせたくない。
ずっとそう思っていた。

だけど、私も歳を重ねた。
争いごとや、ちょっとした軋轢を避けるようになった。
気分を害したくない、させたくない──
いや、正直に言うと、相手の心情を慮っているというより、私自身が気分を害したくないのだ。
だから最近は、飼主さんの要望に応えて受け流すことが増えた。

患者に「ごめんな」と思いながら。

ちょっと暗めの投稿が続いてる?
いえいえ、実は日々しっかり謳歌して、かなり充実しています。

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