攻撃的なウサギへの対処法
診療現場では、イヌ・ネコに比べると少ないものの、攻撃的なウサギも少数ながら存在します。
ほとんどのウサギは、恐怖からじっと固まるか、パニックを起こして暴れる傾向がありますが、ごく一部には最初から積極的に咬みに来る個体が見られます。
このような攻撃行動の背景にはいくつかの要因が考えられ、それぞれに応じた対応が求められます。
主な原因と対処法
恐怖・不安によるもの
→ ウサギのペースに合わせてゆっくり接し、信頼関係の構築を目指す。
縄張り意識の強さ
→ ケージ内での防衛行動が多いため、掃除や給餌時は別の場所に出すなどの工夫を。
性成熟に伴うホルモンの影響
→ 避妊・去勢手術の検討を。攻撃性の軽減が期待できる。
慢性的なストレス
→ 飼育環境の見直し、十分な運動・遊びの時間の確保。
ヒトとの接触に不慣れ
→ 徐々にヒトの手や存在に慣らす。無理な接触は避け、段階的に慣れさせる。
咬まれたときの対応
対策を講じていても、過程で咬まれることは避けられない場合があります。
その際に重要なのは、「即座に手を引っ込めない」ことです。
ウサギは「自分の行動によって環境が変化する」ことを学習する動物です(オペラント条件づけ)。
例えば:咬む → 人が手を引く → 「嫌なことが終わった。やった!」
= 「咬めば追い払える」と学習してしまう。
つまり、ヒトの反射的なリアクションが、ウサギにとって“成功体験”になってしまうのです。
また、怯えたり驚いた様子を見せることだけでも、ウサギ側に“勝った感覚”を与えてしまいます。
実際の対応ポイント
とはいえ、咬まれて出血するほど痛ければ、反射的に反応してしまうのも当然です。
その経験により、次からウサギに対して警戒心を持ち、それをウサギが敏感に察知することで、さらに攻撃性を強めるという悪循環に陥ることもあります。
こうした場合、飼主さんが過度に怖がってしまうようであれば、手袋や道具(例:木のスプーンなど)を使って距離を取ることも一つの対策です。
音による合図について
ウサギは発声によるコミュニケーションを行わないため、人の声で「ダメ」と言うよりも、足ダンのような破裂音のほうが伝わりやすいのではと、私自身は感じていました。
実際、床を叩く音や短い破裂音で一瞬ひるむ個体もいます。
ただしこの方法には注意が必要とされているようです。
破裂音はウサギにとって「危険の合図」として本能的にインプットされているため、かえって警戒・威嚇・恐怖心を強めてしまい、逆効果となる可能性が指摘されています。
そのため、推奨される対応としては、
・落ち着いたトーンで「ダメ」と短く声をかける
・または、無言でその場を離れる・無視するといった対応を行う
・そして咬まなかったときには、おやつや撫でるなどの“ご褒美”を与える
といった、ポジティブ・トレーニングの積み重ねが重要とされています。
診療の現場では、私はウサギにとって「怖い存在」の方が有益なので、つい短絡的に破裂音に頼ってしまいますが、飼主さんは事情が異なりますよね。
最後に
ウサギの攻撃行動には個体差が大きく、「どういう気持ち・性格でその行動を取っているか」を見極めることが極めて重要です。
対処法は一つではなく、その子の性格・来院時の様子・飼育環境などを総合的に判断し、個別に対応策を組み立てる必要があると考えます。
実はこの後、咬み癖が強いオスウサギを去勢手術する予定です。
半日入院で実施しますので、私なりに接してみて、彼の気持ちを探ってみて、飼主さんと今後の対策について話し合いたいと思っています。
結果は、後日報告しますね。
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