最期にあたって

多少の波はあれ、順調に生きてくれて、大凡の長寿を全うし、住み慣れた自宅で、飼主さんに見守られながら、安らかに逝けば、それは愛兎にとっても飼主さんにとっても完璧な一生でしょう。

飼主さんなら誰もが望むエンディングですが、現実は稀で、ウサギもヒトと同様生きものですから、最後の命の灯を消す病気に罹って逝くことが多いです(因みにコロナ禍前の欧米、ヒトではインフルエンザだと2年前知った)。
愛兎がそんな最後の病気と闘うとき、飼主さんはどんな心理状況か?
狼狽、悲観、現実逃避、様々だ。
落ち着け!って言うこと自体酷だから、飼主さん自ら冷静さを取り戻すのを待つが、当の愛兎の気持ちは如何程か?

先日、長年飼った愛兎がいよいよかという状態で来院し、私の説明を聞きながら目に涙一杯ためた飼主さんがいた。
その後一変、飼主さんは一切の涙を見せずに積極的に通院し、愛兎の介護に有益な情報を私から聞き漏らすことなく吸収し実践した。
数日して、その愛兎は残念ながら亡くなり、飼主さんは再び涙で頬を濡らしたが、間違いなく大往生だったと思う。

自分の最期を想像すれば。
こう見えて気が小さいので、周りが取り乱して涙に暮れたら、自分は必要以上に動揺・落ち込む。
「私のために泣かないで」なんて言う力も削がれて、いっそのこと独りにしてくれと拒絶するかも。
逆に上述の飼主さんのような方が寄り添ってくれたら、己の人生を総括し、周りに感謝し、安らかな気持ちで逝けそうな気がする。

愛兎との別れは必ず訪れる。
飼主さんには想像力を持って挑んでほしい。

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