一八〇秒の熱量

2013年、ミドル級の平凡なB級ボクサーが、36歳にして年齢制限による引退を避けるため、チャンピオンを目指す無謀な挑戦をし、その様子がTVドキュメンタリーとして放送された。
本書はそれから7年を経て、TV以上に詳細を再現した回想録。

ボクシングはプロテストに合格してC級、4回戦を4勝するとB級、6回戦を2勝するとA級と昇級していく。
その志を立てたスタート地点(36歳でB級)から、世界的に最も選手層が厚くレベルが高いミドル級で、主人公が9か月後に成し遂げた奇跡は、本書のプロローグにも語られているように、本人と共に関わった人間が「おかしくなっている」からできたとしか言えない。
私的には、著者が最後まで性根を掴みきれなかった主人公のボクサーより、おかしくさせられたジムの会長、トレーナーに感情移入して読み進めた。

このときのジム運営側の経験が、後のWBO世界フライ級王者木村翔の誕生と、田中恒成選手との激闘に繋がるのだから感慨深い。

注目もされず、金にもならないが、こういう自己実現もあることを知った。

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