青年市長は“司法の闇”と闘った

2014年当時、全国最年少だった藤井浩人岐阜県美濃加茂市長が収賄容疑で逮捕された事件で、市長の弁護人を務めた郷原信郎による著作。

市長のビジュアルから感じらる清廉潔白な印象から、この人、やってないんじゃないの? という個人的直感が前々からあり、本書を読む動機になった。

著者自らが検事として23年間刑事司法に関わってきた経験から語る、警察と検察によって完遂される逮捕から起訴までの組織論理、裁判所にかかる有罪判決のプレッシャーは、読んでいて衝撃と恐怖を感じた。
日本の刑事裁判は、なんと99.9%という高い有罪率を誇っており、それならば初動の警察による逮捕は、相当の証拠と確信があるべきだが、本事件ではそれらが全く見受けられないまま、起訴され一審無罪、控訴審で驚愕の有罪と、藤井市長の運命が激しく揺さぶられる過程が詳細に述べられている。

更に本書で初めて知ったが、日本は憲法39条に違反すると指摘されながらも、無罪判決に対する検察官控訴を認める珍しい国だそうで、仮に逮捕・起訴が不当であっても、最終的に無罪判決を勝ち取ることが容易でないらしい。
それを証拠に「潔白を晴らす」意気込みで戦ってきた藤井市長でも、本書が上梓された直後、最高裁の上告棄却が決定してしまい、市長の職を辞した。

著者はこれからも冤罪を訴え続けるというが、最高裁を頂点とする日本の刑事司法自体が、実は「真っ暗闇」だと自ら言及した上で勝ち目はあるのだろうか?

自分に降りかかったら、これほど怖い話はないと思う。
ブラックボックス」同様、権力機構のあり方に危機感を持ってしまう書でした。

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