告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実

本書は2016年に放送されたNHKスペシャル「ある文民警察官の死 〜カンボジアPKO 23年目の告白〜」を元に、更に詳細な取材記録を加え、当時の様子を当事者たちの証言から生々しく再現した書になっている。

1992年国会で成立したPKO協力法案に伴い、カンボジアに派遣された75名の文民警察官(日本の警察選抜隊)は、ひとつの部隊が1カ所に駐屯した自衛隊と異なり、各地(危険地帯も含め)に、少人数で分散配置された。

ふつうの農民でさえ自動小銃やロケット砲を平然と持っている土地で、彼らは拳銃すら使用することが許されなかった。

文民警察官という役割が不明確なままの立場で、国家機能が空白状態のカンボジアに派遣され、国際連合カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の計画・準備不足の指揮下で活動し、危険な目に晒されても、当時の日本政府は「カンボジアでの停戦合意は破られていない」という主張一点張りで、改善のみられないまま、悲劇へ向かった75人の物語。

本書でも指摘されている問題は、この件に関して日本が一切の検証をせず、今に至っていること。

危険というものをリアルにシミュレーションしないまま、建て前論のまま法案が成立した結果生じた悲劇。
それは23年後の安保法制の審議でも同様か、もっと醜くなっているのではないか。

過去の出来事から学ぶ意味で、現在最も重要な書です。

1つ星 (まだ評価がありません)
読み込み中...

コメントは受け付けていません。

このページの先頭へ