ハンナ・アーレント
哲学者である彼女の書を全く読んだ事のない、完全素人の自分が観た本作。
キーワードは「悪の凡庸さ」
ナチスによって行われた巨悪な犯罪が、悪魔のような人物ではなく、思考(誰か他の人の立場に立って考える能力)の欠如した人間によって担われた。
怪物的なものでも悪魔的なものでもない、表層の悪が、人類にたいする犯罪、人間を滅ぼしうるような犯罪をもたらす。
では、そうした悪に対抗するためには。
思考すること、考えることを追究する。
ものごとの表面に心を奪われないで、立ち止まり、考え始めることを彼女は重視した。
「思考は深遠なもの、思考は善悪の判断を助けてくれる、悪は浅い」
しかし、表層的になった社会のなかで自立した思考が孤立するとき、生きることはどれほど過酷で、思考はどれほど勇気を必要とするか、が怖いほど伝わった作品でした。
同胞までも敵に回し、たった独り思想を追求する彼女は本当に強い。
ヘビースモーカーだった彼女の喫煙シーンが非常に多く、チェ・ゲバラに通じるカッコ良さでした。