談志の教え

談志の話で思い出した。

あれは漫才ブーム真っ只中の1980年初頭、フジテレビ毎週日曜夜の花王名人劇場。
家族とTVにガブリつく私は小学生だった。

ツービート、B&B、紳竜、ぼんち、のりお・よしおに窒息するほど笑い転げて、トリに出てきたのが立川談志だった。
それまでの流れから一変、落ち着いた、しかし客に全く媚びない口調で、自らの質素な日常生活ぶりを語り出した。
観客にはその質素エピソードの一つ一つが「セコい、セコ過ぎる」と感じられ笑いを誘う。
最初のうち、TV観ながら我が家も笑っていた。
しかし笑いが起きるたび、談志が「いや、お前たち笑うけどね、私にとってはそれで十分なんだから、十分贅沢のうちなんだから」と反論する。
そのうち観客全員が談志の究極の勿体無い精神に言い負かされ、気が付けば笑ったことを恥じ、シーンと静まり返って聞き入った、TVを観る我が家も同様な反応だ。
当時の日本はバブル前夜、贅沢が美徳と感じるようになっていく時代の入口にさしかかっていた。

小学生の私には衝撃だった。
笑いを求めてTV観たのに、トリでこんな結末になろうとは。
しかし全然不快でなく、親や学校の教師の教えより素直に聞け感銘を受けてしまった。
談志の教えに完全に納得してしまった。

世間体より個人の考えが重要ということを悟った幼少体験。
これを期に、皆がなびくとどうしても外れたくなる、斜に構えて見たくなる、なんだか胡散臭いと怪しんでしまう性格が身についてしまった。
そして皆と同じように考えないことが怖くなくなった。

あれから40年。。。
コロナ禍で散々叩かれ、結果人間関係断つことになっても強気でいられた。

談志の教えに感謝。

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