変異株と感染力について

京大の宮沢先生が、Twitterでプチ講義してくれました。
ウイルス知識のない専門家に誘導される現在の状況に、殆嫌気が差しての発言だと察します。
以下に繋げて長文となったものを紹介します。
後に自分も読み返すため、留めておきたいと思いました。

配列によって株という名前が使われていますが、ウイルス学では株は別の意味で使われています。
巷で言われる株はウイルス学では、グレードとかジェノタイプと言われています。
ウイルスは変異していきますが、配列をもとに系統樹が描かれます。
その枝の一まとまりをクレードcladeと言います。
日本語では分岐群になります。
cladeに名前をつけることはこれまでもありました。
1、2、3とかつけていきます。
さらに1a、1bと細かく分けることがあります。
A、B、Cと分けることもあります
クレードはジェノタイプ(遺伝型)あるいはタイプ(型)と呼ばれることもあります。
基本的には同じ意味です。
私たちは株はまったく別の意味で使っています。
私は混乱を避けるために変異体と呼んでいます。
オミクロン変異体です。
英語ではvariantと呼んでいるからです。
株は英語ではstrainです。
ウイルスは変異をしていきますが、基本的にはランダムです。
そして系統樹は大きくなっていきます。
分岐も増えていき、クレードが明確になります。
これに専門家が名前をつけますが、本質的に大して意味はありません。
人が勝手につけて行くものです。
付け方の基準もありません。
人によってバラバラです。
命名はその時の1番政治力が強い研究者が仕切って着けていきます。

すべてのウイルスはさまざまなクレードがあり、名前が付けられます。
クレードは地域差が出ることが多いです。
そして時間的にも差が出ます。
時間や地域が違うとクレードも異なります。
難しくなりそうだから、詳しくは説明しませんが、ウイルスは変わっていき、クレード(一般的には株と呼ばれる)ができますが、クレードはどんどん置き換わります。
それは感染力だけでなく、病原性の低下、集団が既存のクレードに対して獲得した免疫、ウイルスがもつ免疫回避力によって変わります。
たとえばヒトコロナウイルス229Eは1968年に見つかりましたが、以来変異を繰り返して、たくさんのクレードができましたが、各クレードは栄枯盛衰を繰り返しています。
生き残ったクレードが感染力によってのみ選択されてきたのだとしたら、今の229Eはとてつもなく感染力が強いことになってしまいます。
そんなことは決してありません。
それをいうならすべてのウイルスが感染力を増してきたことになります。
100年前の同種のウイルスと比べたら何百倍も感染力が強いという馬鹿げた結論が導かれてしまいます。
このようなことも知らずに感染力という言葉を使うことは断じて許されることではありません。

ウイルスを知らない人が感染力について言及したり議論することを、ウイルス学者は苦々しく思っています。
人々のミスリードを呼ぶからです。
医師やコンピューター解析の人には厳に謹んでいただきたい。
簡単に言えば、変異株が出てそれが置き換わるたびに感染力が高くなったということは、間違ってるし、ナンセンスだと私は言っています。
そんなこと言ったらすべてのウイルスが、100年前より何百倍も感染力が強いことになります。
ウイルス学では感染力は別の意味で厳密に使われています。
いい迷惑です。

変異株は人間が勝手に命名したもの。
変異株が置き換わるのは当たり前。
その度に感染力が高まっているという推定はナンセンス。
本来、感染力という言葉は別の意味で厳密に使われている。
ウイルス研究者以外がしたり顔で説明するのが腹立たしい。
特にコンピューター解析の人。

1つ星 (5 投票, 平均: 1.00 / 1)
読み込み中...

コメントは受け付けていません。

このページの先頭へ