頭の良いウサギ

仕事上、患者には嫌われる存在なので、長い診療経験のなかで私に懐いたウサギはたった1匹で、別に彼を贔屓したり溺愛したわけでもないのに、どうしてイヌのように慕ってくれるのか理解できなかった。

それくらいヒトにベッタリ寄り添うことはない生きものだが、此奴、頭良いんだろうな〜というウサギにはしょっちゅう出会う。
ひとつひとつその根拠となる動作は説明しないが、要は私をよく観察し、私のコントロールから逃れるために、的確で最小限、騒ぐことなくスマートに脱出しようとするウサギだ。
もちろん彼らは己と相手の頭差を知るので、無駄な抵抗はせず、負けたら潔く諦める。
しかし毎回虎視淡々と診療中の私の隙を伺って、一泡吹かせてやろうと機を探っている。

彼らに負けるようなことがあると仕事に支障きたすので、絶対に私は常勝しなくてはならず、飼主さんの前では呑気に振る舞い、ときには無視しても(だから飼主さんに嫌われる)、ウサギからは絶対に注意を外さない。
また、この仕事、ウサギに勝てなくなったら続けられないので、歳とって彼らの俊敏さに適応できなくなったら引退と思っている。

話は戻るが診察時、この子、頭良いな〜と感じたら、飼主さんに話しています。
言われた飼主さんは、まるで優等生の我が子を褒められた感じで喜んでますが、違いまっせ。
それは、油断ならない子だけど、私はコントロールしたんだから、家でも飼主さん頑張ってね、というエールです。

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