朝の電話

週明け一発目の診療、少数精鋭勤務体制の当院は私にスタッフ1人。
患者さんに処置を施す場合、2人でやるのだから、手が塞がってしまい暫し受付業務ができなくなる。

誰か新たに来院されれば「今手が離せないから、ちょっと待っててね〜」なんて声掛けする。
常連の飼主さんは、こちらが何も言わずとも雰囲気察して待ってくれる。

しかし電話は違う。
こちらの状況など御構い無しで、呼び鈴が鳴り続ける。
それでもまともな理性の持ち主なら、何回かコールして繋がらなければ一旦切って、ある程度時間置いてから掛け直す、という至極当然の行動を取るでしょう。
かかってきた電話は3コール以内で取る、というのがビジネスマナーとされているらしい。
これは、人は10秒以上電話の呼び出し音を聞かされると待たされていると感じるから、そう思わせないためにということだ。
だけど、こちらは事情があって出られない。
では立場を逆にして、どれだけ呼び続けたら相手に対して迷惑になるのか?
私的感覚では10コールまでだろう。

対して今朝の電話は凄かった、相当鳴り続けている。
こちらとしては患者さんの命に関わる処置をしているわけで、折れて電話を優先するわけにもいかない。
触発されてイラつけば処置の精度も低下するから、ここはいつもの如く潔く無視させてもらう。
なんと無視させてもらう間数分、延々鳴らし続けられた

ここまでやられると俄然相手に興味が湧いてくる。
処置を終え、期待を膨らませ出てみたら、可愛らしいお婆ちゃんの声で

「あ〜、やっと繋がったぁ〜ん、頼んであったウサちゃんゴハンある?」

腰砕け、バカ負け、でもどこか憎めない。
そういえばこのお婆ちゃんから自家製漬物頂いて、酒の肴にしたことあったもんな〜なんて思い出しながら

「あっ、お婆ちゃんごめんね〜、今忙しくって出れなかったぁ〜ん」
「うん! あるある、あるよフード、ゆっくり道中気をつけて取りに来て〜」

はっきり言えば、こんな時だけです。
全てのお客様は神様だとして、斯様な態度は取りません。
か弱く繊細な動物であるウサギ、彼らが病気で命を落としかけている切迫した状況で、私とスタッフ共々全神経を救命に集中しているとき、電話になど出れるわけがない。
呼び鈴鳴らし続けられている状況で、生きるか死ぬかの処置をしている私の心の内は、相手に対する醜い言葉で埋め尽くされ、ここにはとても書き出せません。

当院は斯様な体制の動物病院ですから、時としてビジネスマナーが欠如することがございます。
そんなときは責めずに、忖度してくださいませ。

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