さよならのときに

ウサギの飼主さんは総じて愛情が強いです。
人間同士以上に濃厚な関係を築いて、ウサギを愛することに人生捧げているような方も珍しくないような気がします。
そのような心持ちで大切に飼われているウサギを手術する際、飼主さんの無事生還を祈る涙の訴えを受けて、手を震わせながら執刀した経験も何度かありました。

飼育法と獣医療の進歩で、愛兎の寿命も格段に延びました。
それでも飼主さんより先に年老いて、いつか、さよならのときがやってきます。
愛情を込めれば込めるほど、一緒に過ごした時間が長ければ長いほど、愛兎との別離は哀しく、動揺を伴うでしょう。

この仕事を20年続けてきて、人生の折り返し地点を過ぎた年齢になっても、情けないことですが、飼主さんの哀しみを和らげる的確な自分の言葉を持ち合わせていません。
飼主さんと同等の辛い経験がないかもしれない自分が、迂闊に、知ったようなことが言えないという気持ちもあります。
それでも愛兎を亡くして哀しむ飼主さんに向けて、毎回その都度、自分なりの言葉をかけさせてもらっている。

他力本願で申し訳ないのですが、紹介したい書があります。

さよならの力 伊集院静

著者が説く「さよならが与えてくれた力」をテーマに、愛犬との関わりについても語られている、哀しいとき助けとなる一冊だと思います。

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