無事上映から思うこと

ちょうど1年前、切実に日本公開を祈願していた本作が、現在めでたく国内上映中だ。

作品の舞台となるのは、1997年から約10年にわたって続いた日本の総合格闘技イベント『PRIDE』。
戦後日本の復興を精神的に支えた存在の一人が、プロレス文化を日本に持ち込んだ、相撲界出身の力道山だった。
その力道山の弟子であり、1976年にはボクシング世界ヘビー級王者モハメド・アリとの異種格闘技戦を行い、現代MMAの先駆けを作ったのがアントニオ猪木。
さらに、その猪木の弟子であり、「400戦無敗の男」と称されたブラジリアン柔術家ヒクソン・グレイシーとの戦いで苦杯をなめた高田延彦。
このヒクソン・グレイシー VS 高田延彦を実現させるために立ち上がったイベントこそ、『PRIDE』だった。

今でこそUFCは、ボクシングと並ぶ世界的なメジャースポーツ(格闘技)となったが、当時はボクシング利権から攻撃され、世間からは野蛮な競技と見なされ、大衆的認知には程遠い存在だった。
対して、この時代の総合格闘技の中心地は日本だった。
むしろ日本こそが、総合格闘技、MMA文化の発信地だったと言ってもいい。
本作は、その『PRIDE』時代に「霊長類最強」の異名を引っ提げ、鳴り物入りでアメリカから参戦してきたマーク・ケアーの物語である。

当時の空気感を忠実に再現しているだけでなく、登場人物たちの再現度も驚くほど高い。
そして同時に、当時の総合格闘技界が抱えていた暗部までも、かなり踏み込んで描いているという。
例えば日本で、日本人制作によって、これほどの正確性とクオリティで、アントニオ猪木を主人公に据え、対アリ戦の真相まで踏み込んだ作品を作れるだろうか。

妙に感心すると同時に、少しばかり悔しさも覚えてしまう。
そんな作品になりそうだ。

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