サド侯爵の呪い
サディズムの語源となったマルキ・ド・サド。
その彼がバスティーユ牢獄の独房で書き上げた問題作『ソドムの百二十日』は、フランス文学史でも特異な存在だ。
フランス革命の混乱の中、牢獄から盗み出されたこの作品は、歴史の中で幾度も消えかけながらも、密かに好事家や蒐集家の手を渡り歩き、持ち主たちの運命を狂わせてきた。
本書では、サドの生涯と『ソドムの百二十日』の波乱に満ちた所在変遷が交互に語られ、最後にはフランスの巨大詐欺事件で注目を集めるまでの過程が、まるでミステリー小説のように描かれている。
この幅12センチ、長さ12メートルもの巻物に書かれた手稿(本書カバー見て)は、その内容(性倒錯、暴力、反道徳、無神論)のため、かつては焚書扱いされていた。
しかし驚くべきことに、現在ではフランスの国宝に指定され、2021年に約6億円でしれっとフランス政府が買い上げるという結末を迎えている。
政治への強い関心があり、批判精神旺盛なフランス人が、よく議論もなく受け入れたと思えば、ときはコロナ禍、時代が本手稿の運命を導いた。
面白かったわ。
ノンフィクション版インディ・ジョーンズのような興奮で、一気に読破した。
この本を読んで、さらに興味が湧いて『ソドムの百二十日』を読みたくなった?
いいえ、私の感覚が全力で拒んでいるので遠慮しておきます。