麻酔

私は仕事で、毎日のようにウサギに全身麻酔をかけ、さまざまな手術を行っています。

この業務は20年以上続けているため、日常の一部として当たり前のように取り組んできました。
しかし、10年前に自分自身が初めて全身麻酔下で手術を受けた際、さまざまな考えが巡ったのを覚えています。

麻酔による意識の遮断とは一体どのような感覚なのか?
もしそのまま覚醒しなかった場合、苦痛はあるのだろうか?
そもそも意識がない状態なら、覚醒しないままでもそれに気づくことはないのだろうか?

それまで仕事では意識することのなかった疑問が、自分自身の体験を通じて次々に浮かび上がり、麻酔について改めて調べた記憶があります。

驚くべきことに、その10年前どころか、現在に至るまで、麻酔の作用機序(なぜ麻酔が効くのか)は、実は完全には解明されていません

全身麻酔薬については、神経細胞膜に溶け込み膜の流動性を変化させたり、特定のイオンチャネルに結合して神経の情報伝達を阻害する可能性が考えられています。
しかし、これらはあくまで仮説に過ぎません。
全身麻酔薬が「意識」という複雑な脳活動をどのようにして停止させるのか、いまだ完全には解明されていないのです。

この事実を知ったとき、私はふと考えました。
もしかすると、麻酔から覚醒した後の自分の意識のあり方も、麻酔前と微妙に異なっている可能性だってあるのではないかと。

考えてみれば、人類はなかなか大胆なことをしたものです。
全身麻酔が初めて試されたのは1846年、アメリカ・ボストンのマサチューセッツ総合病院でのこと。
医師ジョン・ウォーレンが、麻酔管理者ウィリアム・T・G・モートンの提供したエーテル麻酔を用いて、顎の腫瘍切除手術を成功させました。
それから現在に至るまで、全身麻酔のメカニズムが完全には解明されないまま、医療現場で不可欠なツールとして使われ続けているのです。

私が日常的に利用する反面、できるだけ麻酔に頼らない治療や処置を選択しようともするのは、こうした自分自身の経験と考察が影響しているのかもしれません。

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