麻酔のリスク
最近では、ウサギの健康に関して熱心に学ぶ飼主さんが増え、ウサギはイヌやネコに比べて麻酔のリスクが高い動物であるという認識は広まっています。
では、具体的にどのような点でリスクが高いのでしょうか。
- 呼吸器系が繊細で閉塞しやすい
ウサギは鼻呼吸が主体で、口で呼吸するのが苦手です。
そのため、鼻が詰まると簡単に呼吸困難になります。
また、気道が狭く、麻酔中に気道閉塞を起こしやすいです。 - 消化器系の特性(胃内ガス貯留や腸のうっ滞)
ウサギは胃腸の運動が低下すると、ガスが溜まりやすくなり、鼓腸症(ガス膨満)が起こりやすいです。
これにより、横隔膜が圧迫され、呼吸が苦しくなることがあります。
麻酔によって消化管の動きがさらに低下すると、術後に腸うっ滞を引き起こす可能性が高くなります。 - 静脈確保が難しい
ウサギの血管は細く、皮下脂肪の影響で静脈注射が困難なことが多いです。
静脈確保ができないと、緊急時に迅速な対応が難しくなります。 - ストレスに弱く、ショックを起こしやすい
ウサギは非常にストレスに弱い動物で、麻酔導入時や術後の回復期に強いストレスを感じると、ショック状態に陥りやすいです。
最悪の場合、心停止を引き起こすこともあります。 - 解剖学的に気管挿管が困難
ウサギの気管は狭く、また解剖学的に視認しにくいため、気管挿管(気道確保のためのチューブ挿入)が難しいです。
気管挿管ができないと、人工呼吸や麻酔管理が難しくなり、酸素供給が不十分になるリスクが高まります。 - 肝臓と腎臓の機能がイヌ・ネコと異なる
ウサギの肝臓は麻酔薬の代謝能力がイヌやネコと異なるため、麻酔薬による影響が大きくなりやすいです。
また、腎機能もデリケートで、脱水や低血圧による影響を受けやすいため、術中・術後の管理が重要です。 - 低体温になりやすい
ウサギは体が小さく、麻酔中に体温が急激に下がりやすいです。
低体温になると代謝が低下し、麻酔からの覚醒が遅れたり、術後の回復が悪くなったりする可能性があります。
ウサギの麻酔は、呼吸器や消化器、循環器の特性により、イヌ・ネコよりもリスクが高くなります。
そのため、麻酔前の準備や術中の慎重なモニタリング、術後の管理が非常に重要です。
ウサギの麻酔を安全に行うには、ウサギの特性を熟知し、経験を積んだ獣医師による慎重な対応が不可欠です。