食べてる?

ちょっと知識のあるウサ飼いさんなら、すでにご存知のことかもしれませんが、診察の場ではいまだに誤解が多いため、改めて述べさせていただきます。

ウサギは草食動物の特性上、常に牧草を食べ続けて消化管を動かしている動物です。
うっ滞などの病気で食欲が低下した場合、私はまず「今、どれくらい食べられているか」を飼主さんに必ず質問します。

「食べてます」という返答をいただいても、それだけで安心することはありません。
私は必ず、さらに具体的に食い下がって聞き取ります。

すると、「牧草は、ほんの1~2本。ペレットを少し。オヤツなら喜んで食べています」といった返答になることが珍しくありません。

しかし、これでは十分な消化管運動は回復しません。
消化管というエンジンは、それだけでは再始動してくれないのです。

そうした場合、私はまず患者の状態を確認し、注射による治療を行います。
これは、消化管の動きを直接的に刺激し、即効性が期待できる方法です。
注射後、翌日までに改善が認められた場合、その勢いを持続させるために、内服薬を10日間処方します。
たとえ元気そうに見えても、薬は必ず飲み切っていただきます。
再発を防ぎ、回復した消化管運動を維持するためです。

一方、翌日になっても改善が見られない場合は、必ず再診をお願いし、さらに深く原因を探るために血液検査などを実施します。

ここで言う「改善」とは、「少しだけ食欲が戻った」というレベルではありません。
「普段の1/3〜半分近くは牧草を食べるようになった」という状態です。

ウサギは、牧草をある程度の量、しっかり食べないと、消化管の動きを復活させることができません。
たとえば野生のアナウサギには、消化管の運動を止めないために、自分の排泄便(盲腸便ではなく)を食べるという習性があります。

一度止まってしまった消化管を再始動させるには、大きなエネルギーが必要になります。
だからこそ、「完全に止まってしまう前に手を打つ」ことがとても重要なのです。

そういう意味で、「少しは食べている」=「食べている」ではありません。
あなたの愛兎は、今まさに消化管が止まりかけている、そんな危機的な状態かもしれない――
その意識を持って、観察と対応をお願いしたいと思います。

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