精巣はなぜ陰嚢に収まった?

分子古生物学者・更科 功先生のコラムを読んだ。

本当なのか…「陰嚢は、精子を冷やすために進化した」の真実…「常識を疑う」ことで見えてくる、新たな可能性

「精子を冷却するために陰嚢が進化した」という説は、いまや生物学の常識として広く受け入れられている。
だが、それすらも「本当に正しいのか?」と疑ってみることの大切さを、このコラムは語っている。

たしかに、体温(約37℃)よりやや低い34℃前後が、精子を作るのに最適というのは事実だ。
しかし実際には陰嚢ではなく、体内に精巣をもつ哺乳類も存在している。
それらの進化の経緯をたどると、「冷却のために陰嚢が進化した」という定説には、いくつかの疑問が浮かび上がるという。

更科先生は、この「冷却仮説」に代わる新たな説として、以下の2つを紹介していた。

◉ ディスプレイ仮説
性的アピールのために陰嚢が進化したという考え方。
ただし、現時点ではあまり有力とはされていないらしい。

◉ 全力疾走仮説
運動によって腹圧が高まると、生殖器に不都合が起きるため、腹圧を逃がす形で精巣が体外に出たという説。
つまり、陰嚢は冷却よりも「圧から逃れる」ために進化したという見方で、現在はこちらが有力候補らしい。

この話を読んで、日頃オスウサギを診察している私はふと思った。

オスウサギは緊張すると、陰嚢から精巣を引っ込めて腹腔内にしまい込む。
これは多くの飼主さんもご存知だろうし、「捕食者から精巣を守るため」という合理的な理由も成り立つ。

ただ…緊張時って、腹圧が上がっている状態ではないだろうか?

もしそうなら、全力疾走仮説と矛盾しないか?
「腹圧から逃れるために精巣が体外へ出た」のであれば、なぜ緊張(=腹圧上昇時)にわざわざ引っ込めるのか?

もちろん、私は研究者ではない。
一臨床獣医師としての視点では、そこまでが限界だ。
でも、こうやって常識にちょっとした疑問を投げかけてみることが、新たな発見につながることもある。
そんな“考えるきっかけ”を与えてくれるコラムだった。

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