無理に食べさせない方がいいことも
昨夜、うっ滞あるいは腸閉塞が疑われる症状で食欲がなくなり、じっと動かなくなった当院の患者さんが、夜間動物緊急診療所を受診されたとのことでした。
そして今朝、そのウサギが当院に来院されました。
現在、症状はある程度緩和しており、昨夜の帰宅後の様子について、飼主さんから詳しくお話を伺いました。
飼主さんは「ウサギは2日間食べないと死ぬ」という知識をお持ちで、なんとか食べさせようとフルーツを与えたところ、少し食べたそうです。
この「2日間食べないと死ぬ」というのは比喩的な表現ですが、ウサギにとって「食べない」という状態は、命に関わる非常に深刻なサインです。
そういった意味で、この危機感自体は決して間違いではありません。
しかし、「何でもいいから食べればよい」というわけではありません。
特に消化管に不調がある場合は、消化に適したものを選んで与えることが極めて重要です。
フルーツなどのおやつ類は糖分が多く、消化に負担がかかるため、本来であれば避けるべき選択肢です。
さらに、腸閉塞であった場合、閉塞が解除される前に無理に食べさせることは、かえって状態を悪化させ、命の危険性を高めることにもなります。
そのため、「食べさせてよい状態かどうか」は、専門的にお腹の状態を確認して判断する必要がありますが、それが正確にできる飼主さんは非常に限られています。
したがって、もし翌日すぐに主治医に診てもらうことが可能な場合は、焦って無理に食べさせようとせず、ウサギが自発的に主食(ペレットや牧草)を口にするかどうかを静かに観察し、その様子をしっかりと主治医に伝えるのが最も適切な対応だと思います。
さて、そもそもこの患者さんは、夜間動物緊急診療所に行く必要があったのでしょうか?
「それなら、丸一日様子を見て、翌日に主治医に診てもらえばよかったのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際に今朝の時点で症状が緩和していることからも、夜間に受診された判断は“正解”だったと言えます。
腸閉塞を起こしていた場合、半日様子を見ただけで命に関わるケースもあり得ます。
だからこそ、ウサギに明らかな異変(食欲の低下、動かない、普段と様子が違うなど)を感じた場合は、時間帯に関わらず、できるだけ早く夜間や休日でも対応している動物病院を受診することを強くおすすめします。