優しく言ったとて

30年以上前、私が勤務医だった頃、正直に言えば劣等感を抱えていました。

一度の説明や経験で全てを習得できず、何度も試行錯誤を繰り返していたのです。
それでも、いつの間にかできるようになっていた――そんな感覚を何度も味わいました。
そして特に「苦労した」という意識はありませんでした。

ここで一つ明確に言えることがあります。
それは、指導者が「優しい」からといって、必ずしも習得が早くなるわけではないということです。
重要なのは、自らも考え、失敗を恐れず(致命的な失敗は避けるべきですが)、ウサギとともに学んでいく姿勢です。

動物病院はサービス業の一面もあるため、飼主さんに寄り添った対応も求められます。
しかし、必要以上の「優しさ」は、かえって飼主さんの積極性や自発性を損なう場合もあると感じています。
今も劣等医だと認識している私だからこそ、飼主さんから学ばせていただくことも少なくありません。

かつて「優しく」対応し続けても、飼主さんの経験や知識が十分に身につかないケースを何度も見てきました。
患者・飼主共々、特別待遇で情熱を注いでも、実は飼主に何も伝わっていなかった辛い経験もしました。
そのため、今後も、ときには「当たりが強い」と受け取られることがあったとしても、私なりの基準で飼主さんに接していきたいと考えています。

ただ実際のところ、「優しく」接することが「大人」の皆さんに対して失礼ではないかと内心感じることもあるんです。
そして、そのような私の考えをご理解いただき、信頼してくださる飼主さんたちが当院に通ってくださっているのだと感じています。

1つ星 (11 投票, 平均: 1.00 / 1)
読み込み中...

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ