ならぬものはならぬもの
愛兎が老いてきたら、飼主さんとしては当然、手厚く介護してあげたいと思うでしょう。
それは愛情があるからこその、自然な気持ちです。
しかし、若い頃からしっかりと主従関係が築けておらず、日常的なコントロールがままならない状態で、いざ介護の必要が生じたとき、スムーズに進めるのは難しいものです。
ウサギも人と同じく、年を重ねるにつれ感情の柔軟性が失われ、頑固になっていきます。
そうした中で急に飼主がリーダーになろうとしても、非常に難易度の高い取り組みになります。
それでも、純粋まっすぐな飼主さんほど、あきらめきれずに「何とか言うことを聞かせよう」と、老いたウサギに執拗に付きまとい続けてしまうことがあります。
――それは、もはや「虐待」に近いのではないでしょうか?
ウサギとの信頼関係を築き、飼主が主導権を持つことは、将来の介護を見据えれば必要不可欠です。
ただし、それを老齢期になってから一気に始めようとしても、ウサギは簡単には応じてくれませんし、体力的にも大きな負担となります。
たとえ思うように目的が達成できなくても、1日数分程度のコントロール練習にとどめ、「できたらラッキー」くらいの気持ちで行いましょう。
「じゃあ、うちの子はこのまま何もできないの?」
もし、これまで当院に通っていただいていた飼主さんであれば、私は繰り返しこうお伝えしていたはずです。
「今のうちにコントロールできるようにしておいてください」
「歳を取ったときに困りますよ」と。
それでも「やらなかった」「聞かなかった」「できなかった」――
そのまま切羽詰まった状況で、突然うまくいくことはまずありません。
ならぬものはならぬものです。
無理をせず、老いたウサギが嫌がらない範囲で、できることだけを丁寧に実施していきましょう。