けんかをやめて
カップルやご夫婦で来院され、どちらもウサギ飼育に熱心な方々の中には、診察中に口論が勃発することがあります。
これは、片方が「ウサ飼いのパートナーに付き合っているだけ」、つまり表向きには「可愛いね〜」などと言いながら、実はさほど関心がない──そんな関係なら起きない現象です。
両者が真剣にウサギを愛しているからこそ、意見の対立が生まれ、それが時に激しいやりとりに発展するのです。
困ったことに、そうした口論はたいてい私を巻き込んできます。
お互いに「先生もそう思いますよね?」と私に同調を求め、時には「先生からも言ってやってください」と、まるで討論の援軍にでも加わってほしいかのよう。
中には、「相手を徹底的に論破するためのサポートまで頼んでます?」と思ってしまう方もいたりして…。
私は男なので──あ、これは今の時代にそぐわない表現かもしれませんが、あえて一般論として言えば「理屈」で物事を考える傾向があります。
だから当然、両者の話を聞いた上で「理にかなっている」「納得できる」と思う意見に同調します。
ですが、こういうときは往々にして、どちらも感情的になっていることが多く、「正論」で論じられると、それがまるで自己否定のように感じられてしまう。
結果、絶対に引き下がらないのです。
気づけば、キャリーの中の愛兎はとっくに診察を終えて、早く帰りたがっているのに、その存在はすっかり置き去りにされたまま、私を巻き込んだ熱い口論が延々と続く……。
そんな時、私は心の中でウサギの気持ちを代弁して、こう伝えたくなります。
……と、偉そうに書いてしまいましたが、私が冷静に見ていられるのは、それが「他人事」だからです。
いざ自分のこととなれば、私もまた、口論の多い人生を歩んできましたし、これからもきっと増えていくことでしょう。