生き物を殺して食べる

女性環境ジャーナリストとして、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量増加について報道してきた著者は、畜産業が悪化の大きな要因になっていることと、その家畜に関する統計値を知って愕然とする。

・現在年間600億頭の動物が食用に殺され、2050年には1000億頭になると予想されている。

・富裕国では、本来ヒトが必要とする3〜4倍の動物性タンパク質が摂取されている。

以上の2点に衝撃を受けた著者は、食べる肉の量を減らす必要性を切実に感じ、ふだんは菜食主義、そして自分で捕獲し、殺し、さばいた生き物だけを食べてみる(著者は倫理的肉食生活と命名)と決めた。
しかし、その方法論のない全くの素人からスタート、以後2年間にわたり経験した実験的肉食体験レポート。

一方、普段動物の命と向き合う職業に就きながら、食肉に関しては全く命など意識せず、お金と引き換えに楽して食べて、過食気味なんでしょうな、慢性的に肥満を心配している自分。
朧げながらもそんな日常に後ろめたさを感じ始めていたところ、偶然本書に出会って感銘を受けてしまった。

自分の食い扶持は自分で稼ぐならぬ、自分で「獲る」ことは、ほんの数世代前までの祖先たちは、生きるために自然に習得していた所作であり、それを復古させることは、再び人類が自然の一員になるために必要なこと、そうせずしてこれからも生命の尊厳無視で大量消費を続ければ、いずれ大きな天罰が下るような気がします。

現代の食肉に問題意識のある方にオススメの本書ですが、いきなりプロローグでターゲットになっている動物が、あれなので、当院の飼主さんには刺激が強いかも。

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