ふたりの「雅子」

伊集院静の大人の流儀シリーズを愛読する私に、N師匠がオススメしてくれた一冊。

1985年、女優夏目雅子が白血病で亡くなってから12年後に、母・小達スエが書き下ろした娘の誕生から、女優になり、伊集院静と結婚、亡くなるまでの回顧録。
当文庫本は、最初の出版から更に10年後の2006年末に、新たに多数の秘蔵写真を追加収録し発行したもので、より内容充実・価値の高い一冊といえ、時が経過しても消えない遺族の本書に対する愛情が垣間見える。

やはり興味を惹くのは、第一章での亡くなる前の闘病生活と、第五章での結婚生活の話だろう。
愛情かけて育てた娘のあまりにも短い一生(27年)を、最も近くで見守っていた母親の視点から書き上げられた記憶だが、決して綺麗事だけに収まらず、その殆どを包み隠さず明かした物語になっている。
娘の生前の飾らない性格を尊重し、その全てをひっくるめて読者に感想を持ってもらいたい、娘の本質を理解してほしいという母心だったのかと思う。

今までは伊集院静が語る妻・夏目雅子像しかなかったが、母が語る娘・夏目雅子像にも触れて、より一層理解が深まった気がする。
本人の話を聞くことが、今はもう無理なことが非常に残念だが。

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